モニターヘッドホンとは
みなさんは、モニターヘッドホンというとどんなイメージを持っていますか?
「プロがスタジオで使う音質がフラットなヘッドホン」というイメージを持っていませんか。
具体的な機種では、SONY MDR-CD900STを思い浮かべる人が多いと思います。
モニターヘッドホンというと密閉型のイメージが強いです。また、ケーブルが邪魔にならないように片出しのものがほとんどです。
外部からの雑音に左右されにくい密閉型は、どんな環境でも安定した音質を提供してくれます。また、スタジオでいろいろな人が、ラフに扱っても壊れない耐久性も必要です。
オーディオ・テクニカATH-R70Xは、そういったモニターヘッドホンとは目指す方向性が、違います。モニタースピーカーのような使い方を目指して開発されています。つまり、アーティストがスタジオで自分の演奏を聞くというよりも、マスタリングやミキシングの際にエンジニアが全体のバランスを調整するような使い方を想定して設計されています。
モニターヘッドホンをリスニング用に使うなら、アーティストが使うものよりエンジニアが使うもののほうが向いています。エンジニアが調整した音に最も近づけるヘッドホンだと言えます。
どうして買ったのか
GRADO GH2の装着感と音質は気に入っていたのですが、やや刺激が強すぎました。非常に楽しく音楽を聞けるのですが、1時間位でもう良いかなと思ってしまいます。魅力あるサウンドは飽きやすいのかもしれません。そこで軽量で、飽きずに聞けるような、特徴がなく音質の良いヘッドホンを買おうと思いました。作業中のBGMをスピーカーのように聞けることが一番の目的です。
オーディオ・テクニカは、以前にATH-AD2000を持っていたのですが、高音の刺激が強かったのと、耳のそばで音がなっている感じが強かったです。また、側圧がかなり強く、ウイングサポートもあまり良く感じず、装着感が気に入りませんでした。
それ以来、オーディオ・テクニカ製のヘッドホンは購入していなかったのですが、ATH-R70Xは、非常に評判がよく、ヘッドバンドも金属製で、公式には推奨されていませんが曲げて側圧調整できるという情報を見かけたので、久しぶりにオーディオ・テクニカのヘッドホンを買ってみました。
音質
非常に聞きやすいです。人によってはつまらなく感じると思います。聞き疲れすることはありません。スピーカーに非常に近い感覚が得られます。ヘッドホンやイヤホンにあるダイレクトな感じに慣れていると、非常に物足りなく感じます。以前のオーディオ・テクニカのように高音にクセがあったり、音が耳の近くでなっている感じがありましたがATH-R70xでは一切ありません。見た目はほとんどATH-AD2000と変わっていませんが、この進化は驚きです。
定位が抜群で、ヘッドホンの欠点である脳内定位を完全に解消したわけではないですが、しっかりと楽器の位置が特定でき、広がりを感じ取ることができます。
インピーダンスが非常に高く、製品の注意書きにも機器によっては音量を取れない恐れがありますと書いてありますが、iPhone直挿しでも音量を取れたので、よほどの爆音で聞かない限りどんな機器でも鳴らすことはできます。
ただし、ちゃんとしたアンプを使ったほうが本来の音質を体感できるはずです。
音量によって性質がかなり変わります。音量を上げればモニターヘッドホンらしく、音量を下げればBGMのように聞き流せます。この点もスピーカーっぽいと思います。
デザイン
オーディオ・テクニカの開放型ヘッドホンらしいハニカム構造のパンチングメタルのグリルが特徴です。樹脂部分にはカーボン繊維が練り込まれているようです。樹脂部分は無塗装ですが、パッと見たとき、金属製のように見えて高級感があります。
左右のケーブルを入れ替えてもヘッドホンの左右が変わらないという不思議な機能がついています。ケーブルを交換した際に左右入れ替わらないようにするためです。
適当に接続してもヘッドホン本体のLR表記が正しくなります。
しかし、ヘッドホン本体のLR表記が内側に、ヘッドホン本体と同じ色をしたLRの刻印のためとても見にくいです。ケーブルの機構は素晴らしいですが、毎回装着するたびにLRをしっかりと確認するのは、ストレスが貯まります。ヘッドホン本体のLR表記は本当に見えにくいので、私はウイングサポートにJAPANのシールが張ってあるほうが左とおぼえて使っています。
シンプルなデザインを追求したのかもしれませんが、モニターヘッドホンというのならLRがパッと見てすぐ分かるデザインのほうがいいです。このヘッドホンでただ一つ気に入らないポイントです。それ以外がほぼ完璧なので非常に残念ですが、自分でLRのシールを作って貼れば改善できるので、まだ許せるレベルです。
ヘッドバンドは、はしご状の金属製です。側圧がきついと感じる場合は、GRADOのヘッドホンのように広げることができます。この方法は公式には推奨されていませんので、自己責任でおねがいします。
オーディオ・テクニカ独自のウイングサポートが付いています。頭頂部への負担を分散させる効果があります。ATH-R70xは軽いので、ほとんど押さえつけられている感じがしません。
イヤーパッドはベロア素材で蒸れにくい作りになっています。厚みはあまりなく、やや硬めの材質でできています。強い側圧を受け止めるためのクッションのように包み込むような柔らかい装着感ではなく、かっちりとした感覚です。真円形状なので、装着位置をしっかりと決めないと耳の上下があたって痛くなりやすいです。耳の大きい人は注意が必要です。
ケーブルの長さは3.0mで、細くてしなやかです。見た目の高級感はありませんが、タッチノイズも少なく扱いやすいです。3.0mでデスクトップで使うには長いので、1.8mくらいのケーブルを発売してほしいです。ケーブルは独自規格なのでリケーブルの選択肢がほとんどありません。
めっちゃ軽い
ATH-R70xは非常に軽いです。他のヘッドホンが300g以上あるのが普通の中で210gです。100g近く軽いので装着感は抜群です。他のヘッドホンから切り替えると、着けている感じがなくなったような錯覚を起こすレベルで軽いです。このヘッドホンで一番の素晴らしい点です。長時間ヘッドホンを使う環境の人には非常におすすめです。装着感が良いと言われているヘッドホンは多くあります。イヤーパッドが厚みがあって柔らかかったり、側圧が緩い、ヘッドパッドが柔らかいなどいろいろな要素があると思います。しかし理想は装着感がないことです。ATH-R70xは装着感がないとまでは言えませんが、非常にそれに近いレベルにあります。
ダメな点
ヘッドホンの左右が分かりにくい
ヘッドホンの内側にLRの刻印があり、文字も小さく色分けもされていないので、非常に分かりにくいです。モニターヘッドホンというなら、もっとわかりやすくしてほしいです。
外側にフラットな部分があるので、自作してシールを貼れば分かりやすくなります。
サイズが小さい
コンパクトな作りなので、サイズが小さくて使えないというレビューもあるので試着してから購入することをオススメします。縦方向の長さが足りないというレビューが多いです。
このコンパクトさのおかげで軽量に仕上がっているので、仕方ないのかもしれませんが誰にでもおすすめできなくなってしまったのは残念です。
交換ケーブルの種類が少ない
特殊な構造のケーブルなので純正ケーブル以外の選択肢がほぼないです。私は純正ケーブルに不満はないので、交換の必要性は感じませんが音質の変化を楽しみたい人やバランス化したい人は自作する必要があります。
音量が取りにくい
インピーダンスが470Ωと非常に高いので音量が取りにくいです。ヘッドホンアンプが必須
のように見えますが、iPhoneに直差しでも65%くらいのボリュームで十分な音量が確保できます。
音源の粗が目立つ
モニターヘッドホンなので仕方がないですが、音源の細かなところが気になります。しっかりとした録音のものなら問題ないですが、You Tubeの歌ってみたや弾いてみたをよく聞くようなら今まで気にならなかったノイズが気になるようになります。
ただATH-R70xのスゴいところは、低音量で使うならこういったノイズがあまり気にならなくなります。BGMみたいに聞き流せます。音量を上げればしっかりと音源の良さや悪さを引き出してくれます。
インピーダンスが高いため、ボリュームを細かく調整しやすいので聞く音源やシチュエーションによって特性を変えることができます。
遮音性がなく音漏れが多い
開放型ヘッドホン特徴ですが、遮音性がなく音漏れが多いです。騒音の多い環境では使うのは難しいです。音漏れは開放型ヘッドホンにしては少ないです。しかし、音漏れがあるので使いにくい環境もあると思います。
まとめ
家でスピーカーを使いたいけれど、使うことが難しいという人にはオススメです。
とても軽量で、非公式な方法ですが側圧の調整もできるので長時間の装着でも疲れにくいです。長時間ヘッドホンを使うなら軽いヘッドホンは最高の選択肢です。軽ければ軽いほど良いです。
面白みはないですが、基本となる1本だと思います。どれか1本だけヘッドホンを選ぶなら、私はATH-R70xを選びます。癖がなく音量を上げなければモニターヘッドホンの神経質さがなく、音量を上げればモニターヘッドホンらしい細かな音まで拾ってくれます。You Tubeで動画を適当に見たいときは低音量で使って、音楽を聞くときは音量を上げて使うとこの一本でいろいろな状況で使えます。
最近の高級ヘッドホンは値段が高いし、重量が重くて着けていて疲れるという人にはオススメです。ぜひ手にとって見てください。